Gris vert
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オリジ小話
- 2012/05/24 (Thu)
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「天使を見た!!」
ばたばたと教室に駆け込んだ皐月 夜の第一声だ。
「何だ夜、寝惚けて幻でも見たか。」
「幻じゃねーし!」
「夜が妄想のしすぎでとうとう幻覚まで見るように……。」
普段からファンタジー妄想癖に定評のある夜の妄言にはみんななれてしまっている。
曰く。彼はよく不思議な夢を見るそうだ、その夢は恐らく前世の記憶で自分は神、もしくは神の使いの生まれ変わりなのだとか。
そしていつか、自分にファンタジーな出会いが待っているに違いないと日々妄想しているのだ。
一応補足しておくが神になりたい人ではなく、ファンタジックな冒険に憧れる人である。
「幻覚じゃねーって!真っ白で綺麗な髪に白い肌、セーラー服来てて高台公園の塀をひょいって!!」
「落ち着け、さっぱりわからん。セーラー服だって?」
「何だ幻じゃなくて一目惚れか。」
「だから!あの塀をすたっ!て重力を感じさせない身のこなしで、忍者みたいに!飛び降りてきたの!!3m近くある高さを!!」
「忍者だったんじゃね?」
「もしくは飛び降りてきたのは本当だが、着地は夜の妄想フィルターで美化されてるとか。」
『それだ。』
満場一致、解決。
「だーかーらー!」
「はいはい、HR始まるぞ。」
「くっそー…。」
本当に見たのだ。ファンタジー小説に出てくるような真っ白な髪に制服の裾から覗く白い肌。顔はよく見えなかったけれどあの高さを軽々飛ぶ姿は天使の様だった。
あの塀の上から着地した後とは思えない素早さで走り去ってしまったが絶対に幻なんかじゃない。
学校が終わったら、すぐあの公園へ行ってみよう。
まあ、現実はそう甘くはなく運命のようにあの娘が都合よく公園に居なくたってオレはもう一度会うために探し続けるつもりだ!
なんて意気込みながら公園に向かうと居た。
居たの、あの娘が。
セーラー服姿で真っ白な髪と肌が眩しいあの娘がブランコに乗ってたの!!まじで!
ほら、幻なんかじゃなかった!!
「天使!」
がしゃんっと彼女の前に回り込みブランコの鎖を思いっきり掴んだ。
当たり前だが天使は驚いて固まっていた。
正面から見た顔はんもうすげぇ美人!!天使だお姫様だ!!まじもんだ!
「あっ、ごめん…。つい……。」
「……さ、さつきちゃん?」
なんと目の前の天使はオレの名前を呼んだ。なにこれマジで運命の大冒険開幕の予感じゃね!?
「えっ、オレの名前!知ってるの!?」
「へ?…あ、や……人違い、かも?」
どうも釈然としない顔をしている。まあ男にこんなテンションで話し掛けられたらビビるよな。
でも落ち着けねぇって!非日常が目の前に!!
取り敢えず隣のブランコに腰を掛け仕切り直す。
「ね、君…変わった容姿してるよね。」
いきなり不躾かとも思ったが、あまりにも目を惹く姿だ。
よく見ると眼も青い。今更だけど言葉、通じてよかった…。
「ああ…、えと……外国の血が混ざってるの。」
「すっごい綺麗。今朝上から降ってきた時は天使かと思った!!」
「ぶっ…天使とか。朝すれ違った人だったのね。」
「学校でみんなに天使に会った!って言ったら信じてもらえなくてさ。」
「あはは、それは無理もない。」
あははって、笑ってる。天使が笑ってる。結構気さくに話してくれるんだけど!
「あ、名前。オレは皐月 夜っていうんだ。君は?」
「さつき、よる……。」
急に彼女の笑顔が引いた。
やっぱりいきなり馴れ馴れしかっただろうか。
「あ、あの…別にナンパとかじゃなくて…。何て言うか…。」
「……オレ、よく不思議な夢を見るんだ。」
「夢?」
「そう、世界を救おうとする夢。」
「……。」
「まあ、夢だからよく覚えてないんだけどね。」
ちょっと照れ臭くなってあははと笑って誤魔化す。
でも彼女はすこし難しい顔をしている。もしかして変な奴に捕まってしまったと思っているんだろうか。
「…聞きたい。」
表情とは裏腹に興味を示してくれているようだ。まさかアレか。実は私も同じ夢を見るのパターンか!ようし!と張り切って夢の内容を思い返す。
「えっと、オレは神様のような存在で、ある日世界の在り方に疑問を抱くんだ。世界を縛る理を変えてもっと自由な世界にしたいと思って長い年月をかけていろんな方法を試すんだけど、全然上手くいかなくて。その内次の神になる子が生まれてしまうんだ。神様といっても世界を創ったとかではなく、その世界を守るための役割で時が来ると世代交代する。でもその子に神を継がせてしまうと理はそのままだ。だからオレはその子と交代する前に最後の手段に出るんだ。」
「……。」
「あの、ごめん…意味わかんないよね。大丈夫?」
相づちも無く地面を見つめたまま動かない彼女に不安になり声を掛けると、大丈夫、続けて。と返事が来た。
やばいぞ。冒険の予感しかしねぇ。
「神のような存在はオレだけじゃなくて、何人か仲間がいるんだ。そいつらで世界を廻してる。その体制を崩そうとオレは思ったんだ。世界は誰かの思うように動かすんじゃなくてその世界の自然の力で動いていくものじゃないかって。でも、やっぱり自分の権力を無くすみたいに考える奴もいて…なかなかまとまらなくてさ、仲間を説得する間も無く次の世代が力を付け始めた。時間が無い…。オレは仲間には内緒で、強行手段を決めるんだ……。」
「もういい。」
気付くと隣のブランコに座っていた筈の天使が目の前に立っていた。
悲しそうな顔をしている。何か彼女を困らせるような事を言ってしまっただろうか。
「え、あ…ごめんつまんなかったよな。」
「ううん。夜が話すの辛そうだから。」
「え…。」
「夜、夢は夢だよ。どんな結末だって夢の中だけの出来事だ。夜のせいじゃない。」
オレの話の先をよんだような言葉に、内心テンション上がりまくりだったが天使はオレの心配をしてくれているのだ、いかんいかん。
「や、はは。実はそこまでしか覚えてないんだ。オレ、そんな深刻そうな顔してた?」
「…へ?」
「その強行手段があまり良くないこと、って気がするだけで。後は仲間達とのやり取りの断片的なシーンとかそんな夢かな。」
「ふぅん……。」
「こんな夢ばっかり見るからさ、もしかして生まれ変わった仲間に出逢ったり、すごい冒険が始まったりするんじゃないかっていつも妄想してるんだよね。」
「……。」
「だから、天使みたいな君が目の前に現れてつい…冒険の鍵だ!と思って声かけちゃったんだよね。」
「……ごめんね、天使じゃなくて。」
くすくすと笑いながら言った。その笑顔は十分天使です。
でも!と急に顰めっ面になり詰め寄った。近いです天使さん。
「夢は脳の情報を整理する為に見るものだって言うじゃない?よく知らないけど。」
「ああ、聞いたことあるような無いような?」
「せっかく整理したのに思い出そうとしたら脳みそが可哀想。」
「ぶはっ!ははっ可哀想かな?」
「だから、おっかない夢より夜が自分で新しい冒険を想像すればいいよ。その方が、きっと楽しい。」
よっぽどオレは浮かない顔で夢の話をしていたのか、最後の方は目を見つめ真剣な声で言われてしまった。
不思議な娘だなあ。
「あ、日が暮れちゃうね。行かなきゃ。」
「わ、ごめん!変な話に付き合わせちゃって。」
辺りを見回すとすでに薄暗くなり始めていた。
高台にある公園を下る階段に向かい一緒に歩き出すと、天使は呟いた。
「セリカだよ、夜。私は椎名芹架。」
名前だと気付くのに数秒かかった。容姿に似合わず漢字だったことに驚いた。ああ、やっぱり人間か。なんて失礼なことを思う。
階段に差し掛かった所でセリカは立ち止まった。
「下りないの?」
「私、あっちだから。」
と反対方向を指差す。
もしかして、名前言う為についてきてくれたのかなんて思うとちょっとどきどきしてしまう。
「そっか、また会えるかな。」
「ふふ、さあ?」
焦らしプレイですか!!
笑い返しながらまた来るから!なんて颯爽と階段掛け降りちゃったけど、ちくしょー!!もっとセリカの事が知りたい!何コレ恋!?
にやにや止まらねー、明日から公園通うしかねーだろー!!
また今夜も妄想で楽しめそうだ。
やらしい意味ではない、断じて。
跳ねるようにして階段を下りきった所ではたと気付く。
公園の向こう側は急な斜面になっていてその下は河だ。階段も今オレが下りてきた1つしかない。
心臓が急に煩くなる、あっちに道なんか無いのだ。
あわてて階段を掛け上がり公園を見回すがセリカの姿は無かった。
今まで忘れていたのに、セリカが最初にオレの名前を呼んだ声が頭から離れなくなった。
****************
続くんだか終わるんだか。
セリカちゃんて名前最近よく見かけるようになりましたよね。
ちょっと、ちくしょー…なんて笑
とか言って、芹架ちゃんの名前もあるキャラから拝借しちゃったんですが……。
あの頃はセリカなんて名前ほとんど見掛けなかったけどなあ…私が知らなかっただけかな。
漢字を見てピンと来た方、そっとしておいてやってください笑笑
何か、歳がバレそうって言うか別に隠してないけど。
あれってまだ完結してないのかな…もう終わってる…?
お気に入りオリキャラトップの芹架ちゃんにご登場していただきました。
続くかどうかは謎…笑
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